コラム

『愛知県史』の編纂 ―将来の礎(いしずえ)全58巻、愛県大教員も参加

県や市などの自治体が、その地域の歴史についての書物を刊行するのは、日本の特徴です。
多くの場合それは、専門の研究者に委嘱し、歴史史料の収集と検討を経た上での資料集を公刊し、あわせて地域を中心とした通史叙述が提示されます。

愛知県では、1994年度から2019年度までの26年間をかけて、58巻に及ぶ『愛知県史』が編纂されました。全国に数ある県史の中でも、屈指の浩瀚さと出来栄えです。愛知県の文化事業としても誇るべき成果でしょう。なにより、この愛知地域には、尾張国?三河国などと呼ばれた前近代の時代から、19世紀から21世紀の現代まで、豊かな歴史遺産が生み出されてきた事実こそ、『愛知県史』を成り立たせた条件です。

原始、古代、中世、近世、近代、現代、考古、民俗、文化財、自然、といった編成からなる各巻を開くと、身近な歴史が次々に出てきます。特にそこからは、この地に生活した人々、教科書には出てこない無数の人々の生きた証の断片を、見出すことができます。歴史を基礎で創った人々の息吹に触れることが体感されるはずです。そして、少し思いを凝らせば、蓄積された歴史の営み、特に愛知県域の歴史から何を引き継ぎ、どういった課題を認識し、あるべき将来に思いを馳せるのか、夢羽ばたく機会になります。その場合、県域を越え、日本を越え、グローバル世界との関係で『愛知県史』を読んでみる、という編纂事業の初期には思いも寄らなかった新しい課題が開かれてきています。

この『愛知県史』編纂事業には、愛知県立大学が大きく関わっています。編纂全体の専門委員長は塩澤君夫本学bodog官网(在職1991-1998年)でした。ほかに、部会長、専門委員、調査執筆委員などに、本学教員がたくさん加わっています。全58巻それぞれの末尾で確認できます。

いま、『愛知県史』は、活用の時代に入っています。歴史学という分野に限られることではありません。学校教育、文化理解、地域振興など、さまざまな分野からの関心から、愛知県史の意義を引き出してください。

『愛知県史研究』第24号(2020年)口絵より

執筆

  • 執筆者
    日本文化学部教授
    上川 通夫
  • 投稿日
    2023年07月04日

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