コラム

学生運動と愛県大

1960年代後半を中心に、日本各地で学生運動が活発化し、大学紛争にも発展しました。その背景にはベトナム反戦運動、安保闘争、沖縄返還問題など国内外の動向があり、こうした政治的社会的情勢に対し大学生たちが自らの問題として考え行動した時期でした。東京大学の安田講堂事件や日大紛争などは特に著名で、その他多くの国公私立大学でも、自治をめぐる大学組織のありかたや学問の存在理由が問われました。

愛県大でも、クラス討論会、学内集会などの形式で運動が繰り広げられたようです。1970年6月23日には、日米安保条約締結に反対する愛県大の学生ら400名余りがデモ活動に参加したともいわれています。また一部学生組織による講堂占拠も起こりました。さらに愛県大固有のこととして、学生会館の建設問題があります。
学生会館の建設は、学生たちの強い期待を受けて実現したもので、設計?管理?運営の方針についても強い要望があったようです。特に争点となったのは館内の統一階段(1階から4階にかけての大階段)の設計で、自治活動に使用したい学生の便宜が考慮されない仕組みには、不満が高まったようです。この件については、この愛県大WEBのインタビュー動画で、当時学生だった山下達治さん(現愛知県立大学同窓会長)が語っておられます。曲折を経てようやく学生会館が建設されたのは1972年3月のことで、そののちは学生の諸活動をはじめ、学内諸団体の懇親会や同窓会の会場などに使われました。

学生運動には、全国の多くの大学生がかかわり、大学?学問?社会のあるべき姿を模索していました。それは東京など一部の大学のみでなく、愛知県立大学でも確かに起こっていたことで、歴史に刻まれています。とはいえその事実はあまり調査?記録?研究されていないようです。本学の歴史の一部である当時の学生を顧みることには、現在そしてこれからの学生像を考える手がかりがあるかもしれません。

愛知県立大学70周年記念写真集より

執筆

  • 執筆者
    日本文化学部学部生
    藤澤 元禄
  • 投稿日
    2023年08月28日

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